「運ぶだけ」では、物流会社の価値は生まれない 現場力と提案力で成長を続ける、関西丸和の物流改革

/ ハコプロ編集部

「運ぶだけ」では、物流会社の価値は生まれない 現場力と提案力で成長を続ける、関西丸和の物流改革

「運ぶだけ」なら、物流会社にできることは限られる――そう言い切る関西丸和ロジスティクスの吉井章社長は、顧客の細かな業務にまで踏み込んで課題を見つけ、時には仕組みごとつくり変える“提案する物流”で成長を牽引してきた。今期の売上目標は285億円、そして2040年には1,000億円。現場を歩んできた経営者が描く、物流改革の現在地と、その先へ続く成長のシナリオに迫る。

「物流会社が、ただ運ぶだけだったら、できることは限られてしまいます」。そう語るのは、関西丸和ロジスティクスを率いる吉井章社長だ。同社が今期に掲げる売上目標は285億円。さらに2030年に500億円、2040年には1,000億円という大きな目標を見据える。その成長を支えているのは、単なる輸配送能力ではない。顧客の事業のパートナーとして深く寄り添い、その現場に最適な物流を設計していく提案力だ。「2024年問題」で業界全体が岐路に立ついまも、その姿勢は揺らがない。吉井社長のキャリアを振り返ると、その原点が見えてくる。

■ 蕎麦屋を夢見た青年が、物流の世界へ

■ 蕎麦屋を夢見た青年が、物流の世界へ

吉井社長が、当時、関西丸和の親会社であった丸和運輸機関に入社したのは1981年。意外にも、もともとの夢は物流ではなかった。「若い頃は、自分で蕎麦屋を持ちたかったんですよ」。高校時代から高級蕎麦店で働き、独立を目指していたが、将来を考えるなかで蕎麦の世界を離れ、地元で給与水準の最も高かった丸和運輸機関の門を叩いた。最初はドライバーだった。成果と収入がいま以上に直結する時代。「働けば働いた分だけ給料になる」という環境のなかで、吉井は積極的に仕事を引き受けた。ドライバーを約8年経験した後、配車、運行管理、課長、部長へとキャリアを重ねていく。

転機の一つとなったのが、大手企業の物流改革だった。全国で約750台の配送車が走る巨大なオペレーション。その車両の動きを分析すると、工場やセンターでの長い待機時間など、多くのムダが浮かび上がった。吉井は事業所を一軒ずつ回って現場の実態を調べ上げ、物流工程そのものの再設計に着手する。届けながら回収し、検品もする――そうして混在していた業務を解きほぐし、各機能を切り分けた。あわせて、待機を生まない配送ルートへの組み替えや、小回りの利くワゴン配送の導入を提案。こうした一連の改革で、全国の必要車両数を約530台まで圧縮した。

「物流で重要なのはリードタイムなんです。どこに時間がかかっているのかを見て、どう変えればいいのかを考える」。現在の関西丸和にも受け継がれる“物流を設計する”思想は、すでにこの頃から芽生えていた。

■ 時代を読み、顧客より先に物流を考える

■ 時代を読み、顧客より先に物流を考える

吉井社長が携わってきた物流改革には、共通点がある。それは、顧客から言われたことだけをやるのではなく、その先に起こる変化を予測して提案することだ。

例えば、個人向け宅配業者への物流提案。かつて主流だったのは、決められた場所に商品を届け、近隣の利用者がそれを取りに来る共同購入だった。しかし、地域コミュニティの変化や高齢化が進めば、物流に求められるサービスも変わる。そこで関西丸和が提案したのが、一人ひとりの自宅まで商品を届ける個配だった。いまでは当たり前のサービスだが、当時はまだ、その前身とも言える時代。高齢者宅では、届けること自体が見守りにもつながり、単なる配送を超えたサービスへと進化していった。

関西丸和が属するAZ-COM丸和グループでは、2000年頃には、大手ドラッグストアの立場に立って物流課題を捉え、500店舗構想の立ち上げを物流面から支援。「在庫ゼロ」「納品100%」「ノー検品」を掲げたソリューション提案型の営業に取り組んだ。さらに、北海道の朝採れとうもろこしを、その日の午後には関東圏の店頭へ並べるといった産直物流も手がける。空港への搬送から航空機の手配まで一気通貫で担い、こうしたグループ連携が、競争力を支える源泉となっている。

「市場を読むということですよね。時代の変化に合わせ、“どう変わっていくか”を、一緒に考えるのが私たちです」。物流会社でありながら、顧客の事業そのものを考える。その姿勢が、大手企業との長期的な関係を築いてきた。

■ 選ばれる理由は「桃太郎文化」と品質

■ 選ばれる理由は「桃太郎文化」と品質

吉井社長が考える関西丸和の強み。その一つが、AZ-COM丸和グループに独自に根付く企業文化、「桃太郎文化」だ。「挨拶、返事、小走り。まずは、そういう基本行動ですよね」。一見するとシンプルだ。しかし日々の基本行動の積み重ねが、安全や品質、そして顧客からの信頼に直結する。

さらに同社では、案件ごとにプロジェクトチームを組成し、現場改善を進める。大手EC企業の物流センター運営から学んだことも多い。定位置管理、動線設計など、高い品質基準を現場に落とし込み、自社の物流品質の向上につなげてきた。結果、労災事故ゼロを実現し、東大阪の医薬品拠点では、グループ全社で品質評価1位を獲得した。

コストを抑えながら品質の高い物流を実現する鍵は、顧客との共同改善にあるという。燃料費が上がったからといって、単純に値上げを依頼するのではない。「運送だけでは解決できない。在庫管理や受発注の課題も、お客様と一緒に考える」。必ず荷主先へ足を運び、顧客と一緒に全体最適を探る。「お客様とパートナーにならないと、本当の意味で物流の最適化はできないんですよ」。まさに、3PL企業としての本質的な価値である。

■ 拠点や部署の壁を越え、全員で挑む

■ 拠点や部署の壁を越え、全員で挑む

「今、関西丸和の営業はわずか8人。ほとんどがドライバーや物流センター業務の経験者です」。それでも新規を開拓できるのは、“全員経営”という思想があるからだ。現場も管理部門も、それぞれが売上や利益にどう貢献できるかを考える。AIの活用や業務のデジタル化を進め、将来のDXにつなげながら、全社員が「経営」に参画する。それも、関西丸和の成長力の源泉だ。

さらにAZ-COM丸和グループには、ユニークな営業文化もある。その一つが「100日営業戦略会議」だ。大型の案件には、約100日という時間をかけて、じっくりと向き合う。ただし、その100日でゼロから始めるわけではない。日頃から顧客と接点を持ち、その事業や現場を深く理解したうえで、「自分たちなら、どんな形でお役に立てるか」を時間をかけて調べ抜く。

こうして選ばれた案件には、グループ全体で合宿を組み、北海道から九州まで、すべての拠点が連動してその実現にあたる。

■ 人を「人財」と考える会社へ

■ 人を「人財」と考える会社へ

吉井社長自身、経営者人生のなかで大きな出来事を経験している。7年前、大病を患った。この経験から、社員の健康管理に対する意識は、さらに強くなったという。

人財の定着にも力を入れる。若手社員を中心に1on1ミーティングを設け、評価だけでなく挑戦や成長を後押しする環境をつくっている。退職者についても、職種を問わず退職理由を必ず確認する。現在、新卒はほぼ100%が大卒で、毎年約70人が加わるが、着実に定着率は向上していると話す。

働く環境づくりにも、投資を惜しまない。導入にはコストがかさむが、物流センターにも空調を完備した。さらに、企業内大学「丸和ロジスティクス大学」では、階層別・目的別に、物流の専門知識からマネジメントまで体系的に学べる仕組みを整えている。

■ 地域社会とともに歩む

■ 地域社会とともに歩む

関西丸和が見据えるのは、社業の成長だけではない。地域社会への貢献も、これからさらに深めていく考えだ。AZ-COM丸和グループが中心となって展開している「AZ-COMネットワーク」という物流事業者の会員組織を通じて、すでに全国142の自治体と災害時支援協定を結び、防災訓練や備品管理でも連携する。綾部市を巡る「あやバス」の運行や、ラグビーを通じた小学校での指導、地域の祭りへの協賛も続けてきた。こうした取り組みをいっそう広げ、地域に欠かせない物流インフラであり続けることを目指す。

■ 同じ景色を、次の世代へ

■ 同じ景色を、次の世代へ

「誰もが、この会社で働いて良かったと思える会社にしたいですね」。吉井社長が目指す会社像は明確だ。働きやすい環境をつくり、若手に役職や挑戦の機会を与え、会社の夢と一人ひとりの夢が重なる場所をつくっていく。

吉井の原動力は、AZ-COM丸和グループ創業者・和佐見勝社長の背中にある。トラック1台から始めた会社が2014年に株式上場を果たし、わずか1年で東証一部へと駆け上がった、あの景色。「夢が現実になる様を見てきた世代として、同じ景色を、次の世代にも見せてあげたい」。挑戦は、一人でしても意味がない。熱き心で部下を押し上げ、「できたよね」と分かち合う。若い世代にこそチャンスを与えたい。この会社なら挑戦できる、夢を見られる――そう社員一人ひとりに思わせることが、1,000億円へ、その先の景色へと続く確かな航路になる。

会社概要

商号

株式会社関西丸和ロジスティクス

代表者

代表取締役社長 吉井 章

設立

1985年(昭和60年)5月25日

資本金

8,100万円

本社

京都府綾部市桜が丘三丁目5番地の2

従業員数

2,168名(2025年3月31日現在)

保有車両

551台(2025年3月31日現在)

事業内容

3PL事業、ロジスティクス・コンサルティング、運輸事業、倉庫事業、産業廃棄物収集運搬事業

グループ

AZ-COM丸和ホールディングスグループ

※数値は同社公式サイト掲載情報に基づく。



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