レッカー資格の全体像|免許・玉掛けから独立開業までを解説
/ ハコプロ編集部

故障車や事故車を運ぶレッカー作業には、普通の運転免許だけで足りると考えている人も多いのではないでしょうか。実際には車両の大きさによって必要な免許が変わるうえ、クレーンやウインチを操作する場面では別の資格が求められ、事故車を有償で運ぶには運送業法上の許可も関わってきます。この記事では、レッカー作業に関わる資格を「運転」「作業」「許可」「独立開業」の四つの切り口で整理し、これから携わろうとする人が何から手をつければよいかを解説します。
レッカー作業に免許は必要なのか
レッカー作業と聞くと、けん引免許が必須だとイメージする人が少なくありません。しかし実際のところ、けん引免許が必要になるのはごく限られた場面に留まります。まずは車両区分ごとの運転免許と、けん引免許が求められるケースを分けて整理します。
車両区分によって必要な運転免許が変わる
レッカー車を運転するために必要な免許は、けん引免許ではなく、その車両の大きさに応じた運転免許です。小型のレッカー車であれば普通免許や準中型免許で対応でき、車両総重量が大きくなるにつれて中型免許、さらに大型車になると大型免許が必要になります。この点は乗用車やトラックの免許区分と考え方が変わりません。
車両区分ごとに必要な免許を整理すると、次のようになります。
- 小型レッカー車:普通免許または準中型免許
- 中型レッカー車:準中型免許または中型免許
- 大型レッカー車:大型免許
求人情報などで「レッカー乗務員募集」といった案件を見かけた際は、扱う車両のサイズと自分の保有免許が対応しているかを確認しておくと安心です。
けん引免許が必要になるのは限られた場面
けん引免許が必要になるのは、レッカー車そのものを運転するときではなく、レッカー車が牽引する側の車両重量が一定を超える場合です。具体的には、けん引されるものの車両総重量が750キログラムを超えるケースが該当します。故障車や事故車をアンダーリフトやウインチブームで吊り上げて運ぶ一般的な作業は、この「けん引」には当たらないため、多くの現場でけん引免許は不要とされています。
ただし、レッカー車自体が中型・大型区分に入る場合は、その区分に応じた中型・大型免許が必要になります。現場ごとに扱う車両の重量や運び方が異なるため、配属先の会社にどのような作業が発生するのかをあらかじめ確認しておくことが大切です。
クレーンやウインチを使うなら別の資格が必要

レッカー車には、アンダーリフトやウインチブーム、クレーンといった装備が搭載されているものが多くあります。これらを操作するには、運転免許とは別に労働安全衛生法にもとづく資格や特別教育が求められる場合があるため、装備ごとに必要な資格を押さえておく必要があります。
玉掛け技能講習
クレーンでワイヤーロープなどを使い、車両に玉掛け作業を行う場合には、玉掛けの資格が必要です。吊り上げ荷重が1トン以上のクレーンで玉掛け作業をするなら玉掛け技能講習の修了が、1トン未満であれば玉掛け特別教育の受講が目安になります。玉掛けはワイヤーの掛け方ひとつで荷崩れや転倒のリスクが大きく変わる作業であり、現場での安全確保に直結する知識です。
移動式クレーンの運転に関わる資格
レッカー車に搭載されたクレーンを操作する場合、吊り上げ荷重に応じて移動式クレーン運転士免許や小型移動式クレーン運転技能講習などが必要になります。吊り上げ荷重5トン以上のクレーンを操作するには運転士免許が必要とされ、5トン未満であれば技能講習の修了で対応できる場合があります。装備の性能によって求められる資格の種類が変わる点は、現場に出る前に必ず確認しておきたいところです。
巻上げ機運転特別教育
ウインチによる巻き上げ作業を行う場合には、巻上げ機運転特別教育の受講が必要とされています。故障車をウインチで引き上げる作業は一見単純に見えますが、ワイヤーの張力や路面状況によって思わぬ事故につながることもあるため、正しい手順を体系的に学んでおく意味は大きいといえます。
事故車を有償で運ぶには許可が必要
レッカー業務のなかでも、事故現場から自走できない車両を有償で引き上げて運ぶ業務には、運転免許や作業資格とは別に「有償運送許可」と呼ばれる許可が関わってきます。ここでは、この許可の位置づけと取得の流れを見ていきます。
有償運送許可とは何か
道路上で事故を起こしたり故障したりして自走できなくなった車両を、有償でロープやクレーンを使って牽引・搬送する業務は、法律上「事故車等の排除業務に係る有償運送」として扱われます。この業務を行うには、国土交通省への申請にもとづく許可が必要です。一般貨物自動車運送事業の許可とは別枠の制度である点も押さえておきたいポイントです。
研修を受けて許可を取る流れ
この有償運送許可を取得するための研修は、JAF(一般社団法人日本自動車連盟)などが実施しており、研修を修了すると「研修の受講状況」を証明する書類が交付され、これをもとに許可申請を進める流れになります。
JAF公式サイトの研修案内ページでは、予定カリキュラムや開催地ごとのスケジュールが公開されており、独立開業を視野に入れている人はこうした公的な情報源で最新の開催日程を確認しておくことをおすすめします。
民間資格「自動車救援士」を取っておく意味

ここまで紹介してきた免許や許可は法律にもとづく必須のものですが、業界にはもうひとつ、実務力を示すための民間資格も存在します。それが「自動車救援士」です。
資格の中身と受検資格
自動車救援士資格認定試験は、一般社団法人全日本自動車救援士協会が実施している民間資格で、故障車や事故車への対応に関する知識と実務スキルを問う試験です。
同協会の公式サイトによると、受検には一定の実務経験などの受検資格が設けられているほか、資格には更新の仕組みもあり、定期的な知識のアップデートが前提となっています。
取得するメリット
自動車救援士は取得しなければロードサービスの仕事ができないという性質の資格ではありません。とはいえ、故障や事故で困っている利用者にとって、対応するスタッフが専門的な認定資格を持っているかどうかは、現場での安心感に少なからず影響します。会社によっては採用時の評価材料や、社内でのキャリアアップの目安として活用しているケースもあるようです。
個人事業主として独立するなら別の許可も視野に入る
レッカー業やロードサービスの現場経験を積んだあと、個人事業主として独立を考える人も少なくありません。ただし、独立して事故車の搬送以外にも一般の貨物を運ぶ事業へ広げようとすると、これまで見てきた資格とは別の許可が関わってきます。
一般貨物自動車運送事業の許可
レッカー車そのものによる事故車の牽引には緑ナンバーは不要とされていますが、事故車以外の一般貨物を有償で運ぶ事業へと展開する場合には、一般貨物自動車運送事業の許可が必要になります。この許可を取得するには、車両や営業所、資金計画など複数の要件を満たす必要があり、取得後は点呼記録や運転者台帳の整備、初任運転者への特別な指導といった継続的な管理業務も発生します。
緑ナンバーが関わる場面
レッカー業からの独立を考える際、混同されやすいのが緑ナンバーの扱いです。レッカー車による事故車の牽引作業自体には緑ナンバーは求められませんが、故障車や事故車を積載車に載せて運ぶ場合は、運送の形態によって緑ナンバーが必要になることがあります。どの業務にどの許可が対応するのかを事前に整理しておかないと、思わぬ法令違反につながりかねないため、開業前には行政書士など専門家への相談も選択肢に入れておくと安心です。
レッカー資格をどの順番で取ればいいか
ここまで紹介してきた資格は種類も多く、どこから手をつければよいか迷う人もいるでしょう。最後に、現実的な取得の順番と情報収集の方法を整理します。
まず運転免許と現場の資格から
未経験からレッカー業界に入る場合、優先すべきは配属される車両区分に対応した運転免許です。そのうえで、現場でクレーンやウインチを扱う機会が多い会社であれば、玉掛けや移動式クレーンに関する資格を早い段階で取得しておくと、任される業務の幅が広がりやすくなります。有償運送許可や一般貨物自動車運送事業の許可は、あくまで独立や事業拡大の段階で必要になる許可であり、雇用されて働くうちは会社側が許可主体となっているケースがほとんどです。
講習・研修の情報はどこで探すか
玉掛けや移動式クレーンの技能講習は、各地の労働局が登録している教習機関で随時開催されており、有償運送許可の研修はJAFなど関連団体が地域ごとに日程を組んで実施しています。自動車救援士のような民間資格の情報は、認定団体の公式サイトで試験日程や受検資格が公開されているため、こまめにチェックしておくと予定が立てやすくなります。
レッカー業・ロードサービスの仕事を広げるならハコプロへ
ここまで見てきたように、レッカー業界には運転免許、作業に関わる資格、有償運送許可、一般貨物自動車運送事業の許可など、段階に応じて複数の資格や許可が存在します。特に個人事業主として独立し、事故車以外の一般貨物にも業務を広げていく場合は、荷主企業との接点をどう作るかが経営上の大きな課題になります。
運送会社と荷主企業の直接契約を促進する「ハコプロ」は、掲載運送会社数約6万件、営業所数約8.5万件という規模のデータベースを持ち、登録料・使用料・情報更新のいずれも無料で利用できます。多重下請け構造が常態化しているといわれる物流業界において、荷主企業と直接つながる窓口を持つことは、適正な運賃で仕事を受けるうえで大きな意味を持ちます。ハコプロ独自の「ドライバー名鑑」では、ドライバーの経歴や仕事にかける想いまでを掲載でき、資格や実務経験の裏づけとあわせて発信することで、荷主企業からの信頼にもつながります。有償運送許可や一般貨物自動車運送事業の許可を取得し、事業を広げていきたいと考えているレッカー・ロードサービス事業者の方は、ぜひハコプロへご相談ください。