物流費高騰はなぜ止まらないのか|荷主が取るべき現実的な対策とは
/ ハコプロ編集部

「見積もりを取るたびに運賃が上がっている」「以前と同じ荷物量なのに物流費だけが膨らんでいく」。こうした声を荷主企業の担当者からよく耳にするようになりました。物流費の高騰は一時的な値上げではなく、労働規制や人手不足、燃料価格といった複数の要因が重なって起きている構造的な変化です。この記事では、物流費が高騰している背景を整理したうえで、荷主企業が現実的に取り組める対策までを紹介します。
物流費が上がっていると感じる荷主企業が増えている

物流費という言葉は幅広い意味で使われますが、荷主企業の目線で見ると、商品を運ぶための運賃だけでなく、倉庫の保管料や荷役にかかる費用まで含めて捉えるのが実態に近いといえます。近年はこの物流費全体が底上げされる形で上昇しており、契約更新のたびに見積額が変わるという相談が運送業界の周辺で増えています。
物流費とは何を指すのか
物流費は、輸送費、保管費、荷役費、包装費、物流に関わる人件費や情報システムの費用などをまとめた総称です。企業によっては運賃だけを物流費と呼ぶこともありますが、実際のコスト構造を把握するには、倉庫での作業や在庫管理にかかる費用まで含めて見る必要があります。運賃だけを見て「上がっていない」と判断していても、保管費や荷役費が別の形で上昇しているケースは珍しくありません。
「体感」だけでなく数字にも表れる変化
物流費の上昇は担当者の体感だけの話ではありません。運送業界では、国土交通省が示す「標準的な運賃」の水準が数年おきに引き上げられており、この目安の改定自体が業界全体の運賃相場を押し上げる方向に働いています。荷主企業からすれば、運送会社側の値上げ交渉が以前より頻繁に、かつ強い根拠を伴って行われるようになった、という変化として表れているはずです。
物流費が高騰している主な理由

物流費の高騰には、単一の原因ではなく複数の要因が絡み合っています。ここでは特に影響が大きいとされる4つの要因を順に見ていきます。
2024年問題による労働時間規制の影響
2024年4月からトラックドライバーの時間外労働時間に上限規制が適用され、いわゆる「物流の2024年問題」が本格化しました。1人のドライバーが1日に走行できる距離や運べる荷物量には、これまで以上に制約がかかっています。同じ量の荷物を運ぶにも、より多くの車両や人員が必要になる場面が増えており、この効率低下分がコストとして運賃に転嫁されやすくなっているのです。
燃料価格の高止まり
軽油をはじめとする燃料価格の高止まりも、運送コストを押し上げる直接的な要因です。長距離輸送を担うトラックほど燃料費が総原価に占める割合は大きく、価格変動の影響を受けやすい構造になっています。燃料費の上昇分をそのまま運賃に反映できなければ、運送会社の経営体力は削られる一方であり、結果として値上げ交渉に踏み切らざるを得ない事業者が増えていきます。
多重下請け構造による中間マージンの積み重なり
運送業界では、荷主から仕事を請けた元請けの運送会社が、二次請け、三次請けとさらに別の運送会社へ再委託する多重下請け構造が根強く残っています。委託の段階が増えるほど、途中で発生する中間マージンが積み重なり、実際に荷物を運ぶ運送会社の手取り運賃は目減りしやすくなります。荷主企業が支払っている金額と、現場のドライバーに渡る運賃との間には、想像以上の開きが生まれていることも少なくありません。
ドライバー不足と高齢化
物流を支えるトラックドライバーは高齢化が進んでおり、担い手不足は年々深刻さを増しています。業界では、対策を講じなければ2030年には約25万人、2040年には約100万人規模の人材が不足すると予測されており、運ぶ人がいないという状態そのものがコストを押し上げる要因になります。人材を確保するためには賃金や労働環境の改善が避けられず、その原資は運賃という形で荷主企業にも波及していきます。
- 2024年問題による労働時間規制で輸送効率が低下している
- 燃料価格の高止まりが運送コストを直接押し上げている
- 多重下請け構造の中間マージンが運賃を目減りさせている
- ドライバー不足と高齢化が人件費上昇の圧力になっている
物流費高騰が荷主企業の経営に及ぼす影響

物流費の上昇は、運送業界だけの問題にとどまりません。商品を運んでもらう立場にある荷主企業の経営にも、じわじわと影響が及んでいきます。
商品原価と利益率の圧迫
物流費は商品原価の一部として組み込まれているため、運賃が上がればそのまま利益率が圧迫されます。販売価格に転嫁できれば影響は限定的ですが、競合との価格競争が厳しい業界では、値上げ分を自社で吸収せざるを得ない場面も出てきます。特に薄利多売型のビジネスモデルでは、わずかな運賃上昇が利益全体を大きく左右することもあるでしょう。
運送会社を選べなくなるリスク
ドライバー不足が進む中で、運送会社側も案件を選別する傾向を強めています。相場より低い運賃を提示し続ける荷主企業は、繁忙期に車両が確保できない、あるいは既存の取引先から契約を打ち切られるといったリスクに直面しかねません。物流費の高騰は単なるコスト増の問題ではなく、必要なときに運んでもらえるかどうかという事業継続の問題としても捉える必要があります。
物流費高騰に荷主企業ができる現実的な対策

物流費が高騰する構造そのものを荷主企業がすぐに変えることはできませんが、コストの中身を見直すことで負担を抑える余地は残されています。
標準的な運賃の考え方を理解する
国土交通省が公表している標準的な運賃は、燃料費や人件費の上昇分を踏まえた適正な運賃の目安として示されています。この水準を把握しておくと、運送会社からの値上げ要請が妥当なものかどうかを判断しやすくなります。相場を知らないまま一方的に値下げ交渉を続けると、取引そのものが打ち切られるリスクが高まる点にも注意が必要です。
下請け構造を見直し直接契約を検討する
多重下請け構造で発生する中間マージンは、荷主企業が支払う運賃に含まれているにもかかわらず、実際に荷物を運ぶ運送会社には還元されにくい部分です。実際に配送を担う運送会社と直接契約を結べれば、中間マージンを削減しながら、支払う運賃をより輸送の実態に近づけることができます。条件に合う運送会社をどう見つけるかという課題は残りますが、検討する価値のある選択肢です。
積載効率と輸送ルートを見直す
運賃そのものを下げることが難しくても、積載効率を高めることで実質的な物流費を抑えられる場合があります。荷姿の見直しや複数拠点の配送をまとめる混載の活用、輸送ルートの最適化は、運送会社の負担を減らしながら荷主企業のコストも抑える、双方にとって現実的な工夫です。日々の発注量や配送先の分布を一度棚卸ししてみると、改善できる余地が見つかることもあります。
まとめ
物流費の高騰は、2024年問題による労働時間規制、燃料価格の高止まり、多重下請け構造の中間マージン、ドライバー不足と高齢化という複数の要因が重なって生じている構造的な変化です。荷主企業にとっては商品原価や利益率への影響だけでなく、必要なときに運んでもらえるかという事業継続の課題にもつながります。標準的な運賃を理解し、下請け構造や輸送ルートを見直すことが、負担を抑えるための現実的な一歩になるでしょう。
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今までは運送会社が見えませんでしたが、直接契約することで余分な中間マージンがかかっていたことにも気付きました(北海道の荷主企業社長)
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