貨客混載とは?導入の仕組みとメリット・デメリット・事例を解説

/ ハコプロ編集部

貨客混載とは?導入の仕組みとメリット・デメリット・事例を解説

貨客混載とは何か

貨客混載のイメージ

貨客混載とは、旅客を運ぶための車両や鉄道の空きスペースを使い、同じ移動の中で荷物も一緒に運んでしまう仕組みです。バスや電車が人を目的地まで送り届けるついでに、宅配便の荷物やコンテナも積み込むイメージを持つと分かりやすいでしょう。1台の車両が持つ輸送力を、旅客と貨物という二つの用途に振り分けることで、限られた車両やドライバーをより効率よく使い切ろうという発想が根底にあります。

貨客混載の基本的な仕組み

具体的には、路線バスの座席の一部や床下の荷物スペースに宅配便の箱を積み込み、途中の停留所で配送業者が荷物を降ろして各家庭へ届ける、といった運用が代表的です。鉄道であれば、指定席車両の一角や荷物専用スペースを使い、駅間で荷物を運ぶケースもあります。トラックが人を乗せる場合も制度上は貨客混載に含まれますが、実際に普及が進んでいるのは旅客側の車両に貨物を載せるパターンです。運行そのもののダイヤは変えず、既存の便に荷物という新しい役割を追加する点が特徴と言えます。

混載便・共同配送との違い

物流業界には、複数の荷主の貨物を1台のトラックにまとめて積む混載便という仕組みも存在します。これは貨物同士を組み合わせる発想であり、貨客混載とは前提が異なります。貨客混載はあくまで旅客運送事業の許可と貨物運送事業の許可という、本来は別々に扱われてきた二つの事業を、一つの運行の中で組み合わせる点に独自性があります。混載便が積載効率を高める工夫であるのに対し、貨客混載は事業の垣根そのものを柔軟にする制度と考えると整理しやすいでしょう。

貨客混載が注目される背景

物流の課題

貨客混載への関心が高まっている背景には、単なる効率化の発想だけでなく、運送業界が直面する構造的な課題があります。ドライバー不足と地域交通の維持という、一見別々に見える二つの問題が、実は同じ解決策を必要としている点が興味深いところです。

2024年問題とドライバー不足

トラックドライバーの時間外労働に上限が設けられたことで、これまでと同じ人員では運びきれない荷物が出てくるおそれがあると指摘されています。国土交通省などの資料でも、ドライバーの高齢化と担い手不足は継続的な課題として挙げられており、既存の輸送資源を無駄なく活用する発想が求められるようになりました。貨客混載は、新たに車両やドライバーを増やすのではなく、すでに走っている旅客車両の余力を借りるという意味で、人手不足への現実的な対応策の一つになり得ます。

過疎地域における生活インフラの維持

人口が減少している地域では、路線バスの利用者数が採算ラインを下回り、路線そのものが廃止されるリスクを抱えています。一方で、そうした地域ほど宅配便の配送効率は悪化しやすく、物流事業者にとっても頭の痛い課題です。バスの運行を宅配貨物の輸送でも支えることができれば、路線の収益構造を補い、住民の生活を支える公共交通と物流の両方を同時に維持しやすくなります。国土交通省の資料でも、過疎地域等における人流・物流サービスの持続可能性を確保する取り組みとして貨客混載が位置づけられています。

貨客混載を可能にする制度と許可の流れ

許可申請のイメージ

貨客混載は、事業者が思い立ってすぐに始められる仕組みではありません。旅客運送と貨物運送はそれぞれ別の事業許可のもとで運営されているため、両方を一つの運行で行うには、国が定めた手続きを踏む必要があります。

国土交通省による規制緩和の経緯

国土交通省は2017年9月、乗合バスについては全国で、貸切バス・タクシー・トラックについては過疎地域等に限り、旅客運送事業者と貨物運送事業者が互いの事業を兼業できるよう制度を見直しました。

自動車運送業の担い手を確保するとともに、過疎地域等における人流・物流サービスの持続可能性を確保するため、従来の縦割りにとらわれない新しい事業展開を可能とし、生産性向上を図っていく必要がある。

これは国土交通省が公表した趣旨を要約したものです。その後も対象区域の見直しは続いており、タクシーや貸切バスによる貨客混載についても、対象地域を広げる方向で制度整備が進められてきました。業界紙の報道でも、対象区域を広げる形での規制緩和が段階的に進んでいることが伝えられています。

事業許可取得の基準

実際に貨客混載を始めるには、既存の事業許可に加えて、もう一方の事業についても許可や登録の手続きが必要になります。おおまかな流れは次のとおりです。

  1. 自社が保有する事業許可の種類(旅客か貨物か)を確認する
  2. もう一方の事業を行うための許可基準(最低車両台数や積載できる貨物の重量上限など)を満たしているか確認する
  3. 運輸支局を通じて許可申請または届出を行う
  4. 許可を取得したうえで、実際の運行ダイヤや積み込み方法を設計する

積載できる貨物の重量や車両台数には基準が設けられているため、事前に自社の車両でどこまで対応できるかを整理しておくとスムーズです。

貨客混載のメリット

貨客混載のメリット

貨客混載を導入することで得られる恩恵は、交通事業者・物流事業者・地域住民という立場の異なる三者それぞれに及びます。

交通事業者側のメリット

  • 宅配便輸送を請け負うことで運賃収入以外の収益源を確保できる
  • すでに走らせている便を活用するため、車両の稼働率が上がる
  • 利用者数が少ない路線でも、貨物収入によって維持コストを補いやすくなる

路線バスや鉄道は、乗客数の増減に収益が左右されやすい事業です。そこに貨物という第二の収益源を組み込めば、旅客数だけに依存しない収益構造をつくることができます。

荷主・物流事業者側のメリット

物流事業者にとっては、自社トラックだけでは対応しきれない地域や時間帯の輸送力を、既存の公共交通の便に乗せる形で確保できる点が大きな利点です。特に山間部や離島など、通常のトラック輸送では非効率になりがちなエリアでも、既に定期運行しているバスや鉄道を使うことで、配送コストを抑えながら荷物を届けられる可能性があります。

地域住民にとってのメリット

住民の側から見れば、路線バスの存続そのものが生活の質に直結します。貨客混載によって路線の採算が改善し、廃線を回避できれば、通院や買い物の足が守られることになります。あわせて、配送網が細くなりがちな地域でも荷物が届きやすくなるという副次的な効果も期待できるでしょう。

貨客混載のデメリットと乗り越えるべき課題

貨客混載の課題

良い面ばかりが強調されがちな貨客混載ですが、現場で運用するとなると、いくつもの制約や調整事項が発生します。導入を検討する際は、こうした課題も冷静に把握しておく必要があります。

積載スペースと運行ダイヤの制約

  • 座席スペースを削って荷物置き場を確保する必要がある
  • 積み込み・積み下ろしの時間を織り込むと、既存のダイヤに遅れが生じやすい
  • 大型の荷物や大量の貨物には対応しづらい

旅客車両はもともと人を運ぶことを前提に設計されているため、貨物を積むスペースには限りがあります。停留所ごとの積み下ろし作業が増えれば、定時性を重視する公共交通としての信頼を損なう可能性もあり、荷物量と所要時間のバランスをどう取るかが実務上の悩みどころです。

安全管理・保安基準への対応

旅客と貨物を同じ車両で扱う以上、乗客の安全を確保したうえで貨物を固定する方法や、荷崩れを防ぐための積み方の基準を整える必要があります。あわせて、荷物の破損や紛失が起きた際の責任の所在を、旅客運送側と貨物運送側であらかじめ明確にしておかないと、トラブル発生時の対応が後手に回りかねません。運転士や乗務員に対する荷役作業の教育も、見落とされがちですが欠かせない準備の一つです。

貨客混載の具体的な導入事例

貨客混載の導入事例

制度としての貨客混載がどのように実務へ落とし込まれているのか、実際の取り組みを見ると理解が深まります。すでに複数の交通事業者と物流事業者が連携し、地域ごとの事情に合わせた形で運用を始めています。

バス路線を活用した宅配便輸送

楽天グループの配送サービス「Rakuten Express」は、岡山県の両備ホールディングス傘下である東備バスと提携し、2020年3月から岡山市と瀬戸内市でバス路線を活用した貨客混載による配送を開始しました。バスの定期運行に荷物輸送を組み合わせることで、通常の宅配トラックだけに頼らない配送網を築いている例です。

新幹線を活用した貨客混載

JR九州は2021年5月から佐川急便と共同で、九州新幹線を使った貨客混載事業に取り組んでいます。福岡市と鹿児島市の間で宅配便を運び、新幹線の速さを生かした即日配達を実現しました。物流専門メディアの解説記事でも、鉄道を使った貨客混載の代表例として紹介されています。速達性が求められる荷物にとって、新幹線というインフラは有力な選択肢になり得るでしょう。

高速バスを活用した事例

近鉄バスと宮城交通は、大阪と仙台を結ぶ夜行高速バス「フォレスト号」を利用し、2021年12月から月曜日から木曜日(祝日を除く)にかけて貨客混載による荷物輸送を実施しています。長距離を移動する夜行便の空きスペースを活用することで、遠隔地間の輸送コストを抑える工夫と言えます。こうした事例を見比べると、地域の交通事情や輸送距離に応じて、バス・鉄道それぞれに適した使い分けが進んでいることが分かります。

貨客混載事業を検討する際に押さえたいポイント

運送会社との連携

自社で貨客混載への参入を検討する場合、制度上の許可を取るだけでは運用は成り立ちません。実務を軌道に乗せるためには、連携先の選定や日々の運行体制づくりまで見据えておく必要があります。

貨物側のパートナーとなる運送会社選び

旅客事業者が貨物を扱う場合、荷物の集荷や仕分けといった実務は、多くの場合、経験を持つ運送会社との連携によって支えられています。契約条件や保険の範囲、荷物のトラブル発生時の責任分担を事前にすり合わせておくことが、後々のトラブルを避けるうえで重要です。信頼できる連携先が見つかるかどうかで、貨客混載事業の運用のしやすさは大きく変わってきます。

継続運用のための体制づくり

導入初期はうまくいっても、荷物量の季節変動や路線の利用状況の変化に対応できなければ、運用は長続きしません。動態管理システムなどを使って積載状況を可視化し、需要の変化に応じて積み込む量やルートを調整できる体制を整えておくと、貨客混載を一時的な取り組みで終わらせず、事業として根付かせやすくなるでしょう。

貨客混載の相談はハコプロへ

運送会社とのマッチング

貨客混載への参入や連携先探しを考えているなら、運送会社と荷主企業を直接つなぐ検索サイト「ハコプロ」の活用も選択肢の一つです。ハコプロは全国6万件以上の運送会社と8.5万件を超える営業所のデータベースを持ち、荷主企業はエリアや車両形状、輸送品目といった条件から連携先を検索できます。運送会社の掲載は登録料・使用料ともに無料で、写真や社長からのメッセージ、ドライバー紹介などを通じて、自社の取り組みを直接アピールすることも可能です。

貨客混載のように旅客事業と貨物事業をまたぐ取り組みは、単独の会社だけで完結させるのが難しい場面も多くあります。荷物の集荷や配送を担ってくれる運送会社を探している荷主企業も、逆に旅客事業者との連携先を探している運送会社も、まずはハコプロで自社の条件に合う相手を探してみてはいかがでしょうか。

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