運送業の人手不足が当たり前とされる理由|構造要因と対策の視点

/ ハコプロ編集部

運送業の人手不足が当たり前とされる理由|構造要因と対策の視点

「運送業は人手不足が当たり前」という言葉を、求人サイトや業界ニュースで目にした人は少なくないでしょう。実際にドライバーの求人はいつも出ているのに応募が集まらず、現場では慢性的な欠員を前提にシフトが組まれている会社も珍しくありません。ただ、この「当たり前」という感覚を放置してよいのかというと、話は別です。ここでは、運送業の人手不足がなぜここまで常態化したのか、その背景にある構造的な要因を数字とともに整理し、当たり前で片付けないための視点を紹介します。

運送業の人手不足が「当たり前」と語られる背景

運送業の人手不足は、一時的な景気変動によるものではなく、長期にわたって進行してきた構造的な現象です。求人を出しても応募が来ない状態が何年も続くと、現場では「そういうものだ」という感覚が定着し、欠員前提の配車や長時間労働が慣習化していきます。まずは、この感覚を裏づける具体的な数字を確認しておきます。

ドライバー人口の減少が示す数字

試算によれば、2015年に76.7万人だったトラック運転者数は、2030年には51.9万人まで減少する見込みとされています(出典:キヤノンMJグループ「物流の2030年問題」)。同じ試算では2030年時点で約25万人のドライバーが不足し、輸送能力の34.1パーセントが不足する可能性があるとも指摘されています。荷物の量に換算すると、月あたり約11.5日分の荷物が運べなくなる計算になるといい、単なる採用難ではなく輸送インフラそのものの縮小として捉えるべき規模感です。

有効求人倍率に表れる慢性的な不足感

厚生労働省の職業安定業務統計をもとにした集計では、自動車運転職の有効求人倍率は2025年8月時点で2.59倍に達しており、全職業平均の1.20倍を大きく上回っています(出典:株式会社エクスプレス・エージェント)。しかも2020年10月以降、59か月連続で2倍台を維持しているとされ、一時的な需給の乱れではなく、求職者一人に対して求人が常に二件以上ある状態がずっと続いていることになります。この数字を見れば、現場担当者が「人が来ないのが普通」と感じるのも無理はありません。

なぜ運送業だけ人手不足が常態化しているのか

他の業種でも人手不足はありますが、運送業ではそれが特に長期化しやすい構造があります。ここでは賃金と労働時間、年齢構成、そして業界特有の商流という三つの角度から原因を整理します。

賃金と労働時間の見合わなさ

大型トラックドライバーの労働時間は全産業平均より長い一方、賃金水準はそれに見合うだけの伸びを見せていないと指摘されています。長時間労働の是正を目的とした残業規制が導入された結果、走行できる距離や時間が制限され、歩合部分を含む収入が減少したドライバーも少なくありません。労働環境を改善する動き自体は必要な変化ですが、その途上では収入面での不満が離職につながりやすいというジレンマも生まれています。

高齢化と若手が入ってこない構造

厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、トラックドライバーの平均年齢は中小型で45.9歳、大型で48.6歳と、全産業平均より高い水準にあります(出典:厚生労働省「統計からみるトラック運転者の仕事」)。道路貨物運送業では15歳から29歳の若手が就業者全体の9パーセントにとどまるのに対し、全産業平均では17パーセントに上るというデータもあります(出典:内閣府「構造的課題」)。

つまり、退職していくベテランの数に対して、新しく入ってくる若手の数が圧倒的に少ないという、いわば水漏れバケツのような状態が続いているわけです。

多重下請けが生む歪み

運送業界では、荷主から仕事を受けた元請けがさらに下請け、孫請けへと業務を流していく多重下請け構造が根強く残っています。全日本トラック協会の提言では、真荷主から見て四次請け以上の事業者が実運送を担っている割合がおよそ15パーセントに上るとされています(出典:全日本トラック協会「多重下請構造のあり方に関する提言」)。下請けに出す際の金額は受託金額のおおむね9割以上とされる調査結果もあり、階層を経るごとにわずかずつ削られたマージンの積み重ねが、最終的に荷物を運ぶドライバーの取り分を圧迫する構図になっています(出典:国土交通省・経済産業省・農林水産省「トラック輸送における多重下請構造についての実態把握調査結果」)。誰が実際に荷物を運んでいるのかが荷主から見えにくいこと自体が、待遇改善を後回しにしやすい土壌になっているとも言えます。

「当たり前」で済ませることのリスク

人手不足を所与の条件として受け入れてしまうと、目先の欠員対応に追われるうちに、より大きな問題が静かに進行していきます。荷主側と運送会社側、それぞれに及ぶ影響を分けて見ていきます。

荷主企業が負う調達リスク

荷主企業にとって、運送会社の人手不足は単なる他社の事情では済まされません。急な欠員でトラックが手配できなければ、納期遅延や在庫の積み上がりといった形で自社の事業に跳ね返ってきます。さらに、多重下請けの奥深くで実際に荷物を運んでいる会社や運転手の顔が見えないままだと、いざという時に相談すべき相手が誰なのかも分からなくなりかねません。仲介を重ねるほど、いざという時の対応力は下がっていく傾向があります。

運送会社の経営体力が削られる

運送会社の側から見ても、人手不足を放置することは経営体力の消耗につながります。欠員を前提に既存ドライバーの労働時間を延ばせば離職がさらに進み、採用コストばかりがかさむという悪循環に陥りやすくなるためです。加えて、下請けの立場に甘んじたままでは適正な運賃交渉の余地も限られ、賃上げの原資そのものが確保しにくいという構造上の壁にも突き当たります。

現場で始まっている変化の兆し

厳しい数字が並ぶ一方で、業界の中では従来の商流や慣行を見直す動きも少しずつ広がっています。ここでは、実際に効果が確認されている二つの方向性を紹介します。

荷主との直接契約という選択肢

中間マージンを圧縮する手段として、荷主企業と運送会社が仲介を挟まずに直接契約を結ぶ動きが広がりつつあります。北海道の運送会社みどり運輸では、荷主と直接つながったことで一次請けの立場を得て、運賃についても交渉できるようになったという事例が報告されています。下請けの階層を一つでも減らせれば、その分の余力を運転手の待遇改善や車両更新に回せる可能性が高まります。

ドライバーの姿を見える化する取り組み

もう一つの流れが、誰が荷物を運んでいるのかを荷主側に分かりやすく示す取り組みです。運送会社検索サービス「ハコプロ」が提供する「ドライバー名鑑」は、ドライバーの年齢や社歴、仕事にかける想いを掲載することで、五次請け、六次請けが当たり前になっている業界において「誰が荷物を運ぶのか」を可視化する機能です。荷主企業にとっては安心材料になり、運送会社にとっても自社の強みを直接アピールできる場になります。人手不足そのものをすぐに解消することは難しくても、こうした情報の透明化が信頼できる相手を選ぶ手がかりになっていくはずです。

人手不足を前提にしない運送会社選びのために

運送業の人手不足は、ドライバー人口の減少、高齢化、多重下請け構造という複数の要因が絡み合った結果であり、一朝一夕には解消しません。だからこそ、荷主企業も運送会社も「当たり前」で済ませず、誰と組むのか、どんな条件で契約するのかを自分たちの目で確かめる姿勢が重要になります。

ハコプロは、全国6万件を超える運送会社と8.5万件の営業所情報を掲載し、荷主企業と運送会社の直接契約を後押しする運送会社検索サービスです。エリアや車両形状、輸送品目から条件に合う運送会社を検索でき、掲載料や登録料は運送会社側に一切かかりません。多重下請けの奥にいたドライバーの存在を可視化し、中間マージンに頼らない適正な取引を広げていくことを目指しています。運送会社選びや協力会社探しでお困りの際は、ハコプロの利用や運営会社への相談を検討してみてはいかがでしょうか。

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