自動車運搬車とは|種類・免許から選び方と依頼の流れまで解説
/ ハコプロ編集部

「自動車運搬車」という言葉を検索エンジンで目にしたものの、正確にどのようなトラックを指すのか、いまひとつ像が結べていない方は少なくないでしょう。新車ディーラーの駐車場に停まっている専用車両を見かけたことがある方もいれば、中古車オークション会場で複数台の車を載せたトレーラーとすれ違った経験がある方もいるはずです。
本記事では自動車運搬車の基本的な構造や種類、運転に必要な免許、実際に利用される場面までを整理して解説します。あわせて、車両輸送を依頼する運送会社を選ぶ際に押さえておきたい視点にも触れていきます。
自動車運搬車とは何か

自動車運搬車とは、その名の通り自動車そのものを荷台に載せて運ぶために設計された貨物自動車の総称です。一般的な貨物トラックが箱型の荷台やあおりのある平ボディで多様な荷物を運ぶのに対し、自動車運搬車は車両専用の積載デッキやラダーレール、固定用のベルトやチェーンを備えている点が大きな特徴です。
キャリアカー・車両運搬車・回送車の違い
実務の現場では「自動車運搬車」のほかに「キャリアカー」「車両運搬車」「回送車」といった呼び方が併存しており、業界全体で厳密に使い分けが統一されているわけではありません。とはいえ、おおむね次のような傾向はあります。キャリアカーは複数台の車両を同時に積載できる大型のトレーラータイプを指すことが多く、車両運搬車はキャリアカーを含むより広い概念として使われがちです。回送車は主にディーラー間や整備工場への1台単位の移動に使われる車両を指す場合が多く、必ずしも専用の運搬車体を持つとは限りません。
検索する際は、複数台輸送を想定しているのか、それとも1台だけの移動を想定しているのかによって、探すべき車両のタイプが変わってくると考えておくとよいでしょう。
一般的なトラックとの構造の違い
自動車運搬車の荷台には、車両のタイヤを乗せるためのレールや、傾斜をつけて自走のまま積み込めるようにしたデッキが組まれています。積み込み時には油圧やウインチを使って荷台を傾斜させる、いわゆるローダー機構を備えるタイプもあり、故障車や動かせない車両も安全に積み込めるよう工夫されています。積んだあとはタイヤやフレームをベルト・チェーンで固定し、走行中の振動で車両がずれないようにする作業も、一般貨物の輸送とは異なる特有の工程です。
また、こうした架装があることから、多くの場合は特種用途自動車としていわゆる8ナンバーで登録されます。車検の際には基本設計から外れた積載設備の状態も確認対象になるため、一般の貨物トラックとは点検の観点が異なる点も知っておくとよいでしょう。
自動車運搬車の種類と特徴

自動車運搬車は積載できる台数や車体構造によって、大きく単車タイプ、ローダータイプ、トレーラータイプの3つに分けられます。それぞれ得意とする輸送シーンが異なるため、依頼する側もおおまかな違いを知っておくと、運送会社とのやり取りがぐっとスムーズになります。
単車タイプ
シャーシとボディが一体になったトラック単体で車両を運ぶのが単車タイプです。積載できるのは1台から数台程度で、小回りが利くため街中のディーラーや整備工場への配送に向いています。比較的コンパクトな免許区分でも運転できる車両が多く、新規に車両運搬事業へ参入する事業者がまず導入するケースもよく見られます。
ローダータイプ
荷台自体が傾斜し、故障車や不動車でもウインチで巻き上げて積み込めるようにした構造を持つのがローダータイプです。レッカー移動や事故車両の搬送で活躍するほか、展示会に出展する車両など丁寧に扱いたい車の輸送にも使われています。荷台の傾斜角度や積載幅は車種によって異なるため、運びたい車両のサイズに対応できるかどうかは事前に確認しておく必要があります。
トレーラータイプ
牽引車であるトラクターと、被牽引車両であるトレーラーを連結し、一度に複数台の車両をまとめて輸送できるのがトレーラータイプです。新車を工場から全国のディーラーへ届ける陸送や、中古車オークション会場から販売店への大量輸送など、まとまった台数を効率よく運びたい場面で選ばれています。上下2段のデッキ構造を持つ車両も多く、限られた車長のなかで積載効率を高める工夫が随所に凝らされています。
運転に必要な免許

自動車運搬車を運転するには、車両総重量に応じた免許に加えて、車体の構造によっては追加の資格が求められます。運転者を確保する立場からも、輸送を依頼する荷主の立場からも、どのような免許が必要になるかを把握しておくと安心です。
単車・ローダーに必要な免許
単車タイプやローダータイプは、車両総重量に応じて準中型免許、中型免許、大型免許のいずれかが必要です。免許制度の改正で区分が細分化されているため、保有免許でどこまでの車両総重量を運転できるのか、事前に確認しておくことが欠かせません。またAT限定免許では運転できない車両も存在するため、採用や外注先の選定時にはMT免許の保有状況も確認材料になります。
トレーラーをけん引する場合の牽引免許
トレーラータイプの自動車運搬車を運転するには、通常の免許に加えてけん引免許が必要になります。けん引免許は教習所に通って取得する方法のほか、運送会社によっては自社の研修制度を通じて取得を支援しているケースもあります。複数台積みのキャリアカーを扱える運転者は限られるため、繁忙期には対応できる運送会社そのものが不足しやすい、という事情も依頼する側としては知っておきたいポイントです。
自動車運搬車を使う主な場面

自動車運搬車が活躍する場面は一般消費者からは見えにくいものですが、自動車という商品が世の中に流通していく過程のいたるところに存在しています。
新車の陸送や中古車オークション後の輸送
工場で生産された新車をディーラーへ届ける陸送、オークション会場で落札された中古車を購入店舗へ運ぶ輸送は、自動車運搬車の代表的な用途です。1台ずつ個別に輸送すると非効率になりやすいため、トレーラータイプでまとめて運ぶことでコストを抑えています。
故障車・事故車の搬送や個人の車両輸送
事故や故障で自走できなくなった車両のレッカー搬送、遠方への引っ越しに伴うマイカーの輸送なども自動車運搬車が使われる場面です。展示会やイベント会場への車両搬入、災害時に緊急車両を現地へ届ける場面で使われることもあります。個人からの依頼は単発かつ小口になりやすいため、こうした案件を得意とする運送会社を見つけられるかどうかが満足度を左右します。
依頼費用を左右するポイント

自動車運搬車による輸送を依頼する際の費用は、一律の料金表があるわけではなく、いくつかの要素の掛け合わせで決まります。
距離・台数・車両サイズ
輸送距離が長くなるほど燃料費や拘束時間が増えるため、費用は上がる傾向にあります。また同じ距離であっても、1台のみの依頼より複数台をまとめて依頼したほうが、1台あたりの単価は下がりやすくなります。車両サイズが大きい場合や、特殊な形状で固定に手間がかかる場合も、追加料金の対象になりやすい点です。
繁忙期や片道・復路の違い
決算期にあたる3月前後は新車登録が集中し、陸送需要が高まるため運賃が上がりやすい時期といわれます。復路で荷物がない片道輸送は、往路の運賃に復路分のコストも上乗せされるのが一般的です。逆に、復路でも別の輸送依頼を組み合わせられる運送会社であれば、比較的抑えた運賃で対応してもらえる場合もあります。
運送会社選びで失敗しないための注意点

自動車運搬車そのものの知識と同じくらい重要なのが、実際に輸送を任せる運送会社の見極めです。
固定方法や保険加入を契約前に確認する
車両の固定が不十分なまま輸送された結果、走行中の揺れでボディに傷が付いたり、最悪の場合は荷崩れにつながったりするリスクはゼロではありません。依頼前には、タイヤやフレームをどのように固定するのか、積み込みに立ち会えるかどうかを確認しておくと安心です。あわせて輸送中の事故や損傷に備えた保険加入の有無も、契約前に確認しておきたい項目です。
多重下請け構造とホワイト物流の視点
物流業界では2次請け、3次請けと仲介が重なる多重下請け構造が根強く残っており、間に入る業者が増えるほど中間マージンが発生し、実際に運転する運送会社の取り分が圧迫されがちだと指摘されています。加えてドライバー不足は年々深刻化しており、2030年には約25万人、2040年には約100万人規模の人手不足に達するとの見方もあります。こうした背景から、荷主企業と運送会社が仲介を挟まずに直接つながり、適正な運賃で契約できる仕組みへの関心が高まっているといえるでしょう。
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